リスティング広告ワーストプラクティス:実は役に立たない5つの「賢い」戦略
2015年09月11日
ライター:Erin Sagin

訳者はじめに
今回ご紹介するのはいまWordstreamで精力的に活動しているErin Sagin氏による記事です。Googleアドワーズの早い変化に対して、リスティング運用の常識と思われている施策はもう古い!と一刀両断しています。一部日本では当てはまるケースが少ないものもあるかもしれませんが、アカウント見直しの大きなヒントになるものも。Erinがあげるベストの反対ワーストプラクティスのトップ5、さっそく読んでみてください。

  1. ワーストプラクティス#1:地上のすべてのキーワードをアカウントに登録する
  2. ワーストプラクティス#2:キーワード挿入機能(DKI)をすべての広告グループに適用する
  3. ワーストプラクティス#3:国内向けキャンペーンと海外向けキャンペーンで同じ戦略を用いる
  4. ワーストプラクティス#4:Googleの検索広告にすべての労力を注ぐ
  5. ワーストプラクティス#5:品質スコアのみに基づいてアカウント管理の意思決定をおこなう

※この記事はWordStreamのErin Sagin氏の許諾を得て、以下の記事を翻訳したものです。
PPC Worst Practices: 5 “Smart” Strategies That Are Actually Dumb

デジタルマーケティング担当者として、私たちは変化の激しい業界でその一角を占めることができたいへんな”喜び”を感じている。Googleアドワーズのことを考えてみてほしい。サービス開始の2000年当時から今に至るまでに劇的な変化を遂げてきている。当初は一部の顧客向けに運用を代行する内部的サービスとして始まったものが、まもなく自社での運用を望む顧客向けのセルフサービスのポータルとなってから急速に進化した。
AdWordsがリスティング広告プラットフォームとしてより複雑に高度になるにしたがって、アカウントマネージャーにとって常に柔軟に考え、こうした変化に合わせて戦略を調整することが必須になったわけだ。しかし古いやり方に凝り固まっている広告主にどれくらいの頻度で出くわすかというとそれはもう数えきれないほどで、まったくもって頭にくる。

そこで、いますぐリスティング広告の施策レパートリーから削除すべき、時代遅れの”ベストプラクティス”トップ5のリストをお見せしようと思う。

ワーストプラクティス#1:地上のすべてのキーワードをアカウントに登録する

キーワードを無数のバリエーションも含めて登録した巨大アカウントを構築するのがトレンディだった時代も確かにあった。WordStreamで働き始めて最初の仕事の中で、コスメサイトのロングテールキーワードのリストを作ったのをよく覚えている。 何時間もかけてメイクアップ関連のキーワードを考え出し、どうにかリストを提出したら、すべてのあらゆる単語の語順を並べ替えたパターンも入れろと突き返された。右も左もわからなかった私は、ほんのいくつかの広告グループのためのキーワードリストを作るのにその後のほとんど丸2日を費やしたのだ。このあまりにつらい経験のせいで、いまだにオンラインではメイクアップ商品を買っていない。

今や、検索広告でキーワードを大量に登録する戦略は廃れつつある。 完全一致とフレーズ一致の類似パターンでも広告が表示されるようになることが発表されて以降、並べ替え、表記ゆれ、複数形単数形などのバリエーションを血眼になって網羅する必要はなくなった。というよりもむしろ大量のキーワードを登録することはリスクですらある。もし関連性の低いキーワードまで大量に登録していたとすると、検索ボリュームの小さいワードの多くはどうしても品質スコアが低くなる可能性が高い。これら品質スコアの低いキーワードは新たに登録するキーワードにも悪影響を及ぼすことが考えられ、その後も高い品質スコアを獲得することは難しくなる。なにより、無数のキーワードがつめこまれた状態では、アカウントを効果的に管理するのは生やさしいことではないだろう。

当社の創業者Larry Kimは、コンバージョンにつながらない下位1/3のキーワードを削除し、それらに費やしていた予算をリマーケティングのようなより実りある施策に振り分けるようすすめている。

業界はキーワードに基盤を置いた戦略から完全にシフトしている。 ますます多くの広告主が大切な予算をアイデンティティに基づくターゲティングに傾けている。 たとえばFacebook広告ではきわめて具体的な条件に合致するユーザーをターゲットにすることができる。 この設定は基本的なデモグラフィック・地域・インタレストカテゴリーからカスタマイズされたリスト(ユーザーによって既に登録されている有望な情報に基づいたもの)にも有効だ。先週私がFacebookを見ているときに現れた(一風変わった)広告をここでは例としてあげてみよう。

広告例

この広告を見た瞬間の私はこんな感じだった。「どうしてFacebookは卵子凍結パーティを私にすすめてくるの?!」そして気づいたのだ、Facebookは私が独身で、ボストンに住み、27歳であることを知っており、その属性でただちに「出産適齢期」年代グループに落とし込まれたのだということに。ドカン!広告主はみごとターゲットに命中させた。腕利きだと思わない?この手法が技術的に精緻化されていくにつれ、よりいっそう広く使われるようになることが予測される。

ワーストプラクティス#2:キーワード挿入機能(DKI)をすべての広告グループに適用する

ここで誤解しないでほしいのは、DKIが使えない機能だと言っているのではなく、広告文を作成するときに頼るべき方法ではないという点。DKIは基本的には広告文を作成する手間を省くためのものだ。時間に追われながら、それなりにまともな広告文を急いで作ろうとしているときなら、DKIは急場をしのぐひとつの方法になる。しかし大きな問題を引き起こすことも事実だ。たとえば表記ゆれのキーワードを登録している場合にDKIを使えば目も当てられないスペルミスの広告になるし、競合のブランドキーワードを登録している場合に使えば悪意ありとして不承認になるのがオチだ(ひどくすれば訴訟にも。やれやれ)。

DKIを使った広告がまともなパフォーマンスを見せることもあるが、現実的にはCVを稼ぎ出すスーパースターになることはまずない。DKIを使いつつまともな広告が出ているかどうかを調べるくらいなら、明確なテーマを持ったキーワードに基づいて細かく緊密に構成した広告グループを作ることに時間を費やす方がはるかによい。そうすればマッチタイプによらず、キーワードにぴったりで関連性の高い広告を作ることができるだろう。

広告カスタマイザ

もし自動カスタマイズという考え方が好きでDKIに執着しているということなら、「DKIの筋肉増強版」ともいえる新しい広告カスタマイザをご紹介しよう。広告カスタマイザを使えば、たとえば製品ブランド、型番、価格のほか、ユーザーを購買へとかきたてるイベント日時までのカウントダウンといったより高度な属性に合わせて広告をカスタムメイドすることができる。よく練られた広告文にこうしたカスタマイズを加えれば、成功間違いなしのテッパン施策となる。

訳者注「広告カスタマイザ」:広告作成画面で中かっこ{}で囲まれたパラメータを使用することにより広告が表示されるときに動的テキストで置き換えるもの。ブランド、型番、価格などを検索語句にしたがって挿入したい場合には別途データフィードをアップロードする必要があるが、キーワード挿入とカウントダウンについては、広告作成時に中かっこ{を入力することであらわれるプルダウンから作成することができる。

ワーストプラクティス#3:国内向けキャンペーンと海外向けキャンペーンで同じ戦略を用いる

会社が海外市場にもマーケティング活動を広げようとするとき、現状の国内向けアカウントがどのようなものであれ、海外でも似たようなパフォーマンスを生み出すだろうと思ってしまうことはよくある。もっと悪いのは、アカウント全体をGoogle翻訳に突っ込み、吐き出された翻訳語を何でもかんでも入札してしまうことだ。これはリスティング広告にとってハラキリに等しい!Google翻訳は簡単な翻訳には十分かもしれないが、言葉のニュアンスまでは訳してくれない。誤訳されたキーワードではほとんどトラフィックを生まないか、またはもっと悪くすれば無関係なトラフィックを招き、あなたがリスティング広告に費やした努力を無駄にしてしまうだろう。

さらに、異なる属性を持つユーザーリストをターゲットとする場合when targeting a different audience、社会文化的トレンドを考慮に入れることが重要だ。たとえばアメリカ人はバーゲンにつられやすい傾向があり、CVRを上げるため目玉商品やディスカウントを広告文に盛り込むことは広くおこなわれている。しかしこの手法はスイスではCTRに悪影響を及ぼすのだ。スイスの消費者は品質の高さにより重きを置いており、高級品や豪華な商品の広告がクリックされやすい。

こうした社会文化的多様性を考えると、ターゲットとする市場の特性に合うようにキャンペーンを設計するということが非常に重要となる。ターゲットに合わせたキャンペーン設計についての指針を探しているのであれば、HeroConfのKaty Tonkin とMichael Strickerが最近まとめたスライド(http://www.pointit.com/wp-content/uploads/2015/04/HeroConf-2015-INTL-PPC-4-26-15.pdf)をご覧になることを強くおすすめする。地域ごとの社会文化的マーケティングをくわしく分析してくれている。

ワーストプラクティス#4:Googleの検索広告にすべての労力を注ぐ

初めてのリスティング広告をどこかに出稿しようとしたら、Google検索ネットワークは賢明な選択ではあるが、この世界における究極の選択肢というわけではない。実際問題Googleで検索をおこなうユーザーだけをターゲットにしようとしているのなら、おそらく山ほどの機会を損失しているといってよい。

Googleという空間から抜け出すのをためらういちばんの理由は、次にいったいどこへ行けばよいのかわからないということだろう。選択に迷って固まっていないで、チャンスを手にしよう!ここにGoogleの次に選択すべき媒体候補をいくつかあげてみよう。

  • Bing検索広告:Bing検索広告はAdWordsの検索マーケティングとほぼ同じフォーマットを採用しているため試しやすい。AdWordsアカウントをそのままインポートし、それを少し調整して使用することができる。Bingでは検索ボリュームはあまり期待できないものの、その分CPCは低く抑えることができる。
  • Googleショッピング:Eコマースの広告主なら、ショッピングキャンペーンを運用した方がよい。ショッピングキャンペーンを使えば検索結果に自社製品の画像を表示させることが可能だ。設定や商品情報のフィードの管理が重荷になる可能性はあるが、やってみれば結果は概ね輝かしいものといえる。
  • リマーケティング:正直に言おう。リマーケティングはデジタルマーケティング施策の中でもっとも優れているもののひとつだ。リマーケティングは過去にサイトを訪れたユーザーをターゲットとするというもので、サイトを訪れたことがあるということは、新規ユーザーと比較してよりつながりやすいということになる。リマーケティングは業種によらず広く効果を発揮し、設定も簡単だ。
  • Googleディスプレイネットワーク:Googleディスプレイネットワークの広さは魅力的だ。オンラインユーザーの90%、200万サイトを単体でカバーする。このカバレッジの広さは、ファネル上部のより購入に傾いたユーザーに働きかけ、自社ブランドの普及を促すのに最適な場所である。
  • SNS広告(Twitter、Facebook、LinkedIn):SNS広告はブランド認知を広げユーザーをサイトに誘導するための方法として日増しにポピュラーなものになりつつある。SNS広告ですばらしいのはなんといっても高度なターゲティングを組み合わせてもっとも理想的なオーディエンスをとらえることができる点である。
  • Yandex、百度、Seznam、Daum、360、Sogou、Yahoo!Japan:Googleが検索エンジンの主流を占めている国に住んでいると、他の国では必ずしもそうではないということを忘れてしまいがち。しかし海外のマーケットに注目しているのなら、その地域のユーザー行動を理解し、自社戦略をそれに合わせて調整することが重要だ。上にあげた検索エンジンはアジア・ヨーロッパ地域で非常にポピュラーなものである。

ワーストプラクティス#5:品質スコアのみに基づいてアカウント管理の意思決定をおこなう

Larry Kim (品質スコアで頭がいっぱいの当社の創業者)に心臓発作を起こさせてしまう前に言っておくと、私は品質スコアを見くびりたいわけではまったくない。品質スコアは注視しておくべき指標だし、品質スコアが高ければコストを節約できるというのも自明のことだ。しかしアカウントを最適化するときには、品質スコアよりもCVRやCPAなどの実際に検証できるデータをまず調べた方がよい。

品質スコアの割り当てはある意味主観的だということは覚えておくべきだ。品質スコアというのは、顧客目線に立ち、スパム的な関連性の低い広告やランディングページに悩まされないユーザーエクスペリエンスを広告主に実現してもらうためにGoogleがおこなうインセンティブなのである。ということは、これまで低い品質スコアによってパフォーマンスも低い状態が続いていたとすると、新たに追加したキーワードも低い品質スコアからスタートするということになる。しかし調べたところ、業種により他業種と比べて品質スコアが低い場合があることが明らかになっている。どういうことかというと、必ずしもキーワードの品質スコアが低いためにCVを生み出すことができないというわけではなく、逆もまた然りということだ。運用上大きな決定を下すときに、品質スコアだけを見てはいけないというのはそういう理由からである。

品質スコアは二次的に、アカウントの「ヘルスチェック」の指標として使うべきものだろう。品質スコアは、どのキーワードに注意を払うべきかを判断する指標と考えたい。たとえば、品質スコアの低いキーワードがあったとする。そのキーワードはよく練られた広告文と適切なランディングページを持ち、ターゲットがより絞り込まれた新しい広告グループに入れれば真価を発揮するかもしれない。品質スコアを改善しようと調整を続けることが、コストを削減し、ユーザーエクスペリエンスを改善することにもつながる―いいことづくめだ。

訳者おわりに

いかがだったでしょうか。キーワード挿入機能をアカウント全体で使用したり、海外でもリスティング広告を出稿するといったことは日本ではあまり多く用いられていることはなさそうですが、キーワードのマッチタイプや表記ゆれをどう考慮し登録すべきかは、実はいつでも古く新しい問題かもしれません。ただ検索語句レポートから「部分一致(セッションベース)」がなくなった影響もあるのか、登録キーワードと検索語句の関連が以前と比べて低くなったようにも見えたり、本文にもあるように一部の品質スコアの低いキーワードが広告グループ全体に影響を及ぼす可能性もあるなど、従来通りの運用ではパフォーマンスを出しにくい現状も一部では出てきているかと思います。しかし漏れなくダブりなくアカウントを最適化していくには、やはり地道な検証作業によって改善を重ねていくしかない、ということに変わりはなさそうです。