【インタビュー】江沢真紀・私がこれからもSEOをきわめる理由
2012年06月25日
ライター:寳 洋平

2012年4月、アイレップの渡辺隆広氏がSEMリサーチにて、検索業界15年目の軌跡を振り返る「私がSEOの世界に足を踏み入れたきっかけ」という記事を書かれました。この記事を興味深く読んだ私たちは、同じくSEOの黎明期から携わってきた弊社SEOコンサルタントの江沢真紀にインタビューを行い、記事にまとめました。

興味をもったきっかけと続けてきた理由

――江沢さんがSEOに興味をもったきっかけは何ですか?

江沢:最初からSEOに興味を持っていたわけではないんです。
SEOとの出会いは2001年、イージャパンという会社でした。この会社は今思えば本当に優秀な人が多くて、現在GoogleでGoogleアナリティクスの担当をされている大内さんが社長、アユダンテの安川も創立者の1人でした。

実はイージャパンで働く前は財団法人で働いていたのですが(しかも経理!)、働きながらデジタルハリウッドというwebの学校に通いました。そこで知り合ったクラスメイトにイージャパンを紹介してもらって、マーケティングアシスタントとしてアルバイトをすることになったんです。
当時の夢は一応webデザイナーだったのですが、イージャパンに入り、ジェフ・ルートに出会い、気づいたらSEOをやることになっていたという感じです(笑)。

――ジェフ・ルート氏との出会いで、仕事が大きく変わったとか。

江沢:そうですね。当時ジェフはアメリカでSEOをやっていて、すでにいろいろなサイトで成功していたようです。
ジェフにとっては、日本語でSEOができるのかが最初のハードルだったと聞いています。言語が違うと検索エンジンも、webサイトも違いますから。

私の記憶では、2001年の秋に初めて日本語サイトにSEOを施し、大きな効果をあげたことを覚えています。私もそのころから手伝いはじめましたが、本当にSEOの考え方を1から教えてもらいました。
当時は資料もwebサイトも本もなかったのでジェフに教えてもらった概念を理解するのに必死でした。でも不思議なことに、その後10年以上経った今でもジェフに教えてもらったメソッドは何も変わってないです。

もちろんサイトが複雑化するにつれて技術的な要因は増えましたが、基本的な手法と「キーワードが肝」「効果をログから見る」。
この2点のポイントは今も同じです。

――その頃のインターネットは江沢さんにはどう映っていましたか?

江沢:うーん、どうだったんでしょうか。
イージャパンに入ってからしばらくはSEOを覚えるのに必死で、頭の中が常にロボットのことで一杯でしたから、あまりよく覚えてないです(笑)。

でもSEOという言葉自体が認知されていなかったので、渡辺さんと同じく「何の仕事してるんですか?」って聞かれても多くは語らず「IT系です」って言っていたように思います(笑)。
Googleが出てきてロボット型検索エンジンが話題になって、その結果SEOがメジャーになって雨後の筍のようにSEO会社が出てきて、そこまでで2・3年、あっという間の出来事でした。

――当時SEOを提案したときのお客様の反応は?

江沢:仕事をはじめてから最初の数カ月は泣かず飛ばずで、ジェフに「このままだと君はクビだよ」ってよく言われていました(涙)。
その後、2002年になって新聞やいろいろなメディアでSEOが取り上げられるようになってからは、驚くほど引き合いが増えるようになりました。

当時のお客様は、たぶんSEOのことを「魔法」みたいなものだと捉えているようなところがあったと思います(笑)。
「検索エンジンで上位に出す、そんなことが本当にできるの?」
って感じでした。だから日本では外部リンクが流行ったのかもしれません。リンクを貼れば順位が上がる、これはまさに魔法ですよね。
イージャパン、そしてその後のECジャパンでは、本当のSEOは何かをいつも伝えようとしていたように思います。

――そういえば学生時代、ライターの仕事をされていたんですよね。

江沢:はい、当時は編集者になりたくて、学生時代にずっと小学館で雑誌の編集をやっていました。
当時ついていた女性編集者の方の仕事へのこだわり、質の高さ、ハンドリング力などがすごくて、今思うとその方に教えてもらったことが、自分の仕事の基盤になっている気がします。

それから「人に伝える文章の書き方」を教わったことが、SEOにもすごく役立っていると思います。
SEOのキーワード選びからコンテンツに関わる部分、リンクの貼り方、ログ解析のレポートまで、すべて文章が関わりますから。

――なぜ、これまでSEOを続けることができたのでしょうか?

江沢:それは自分にとってSEOが天職だ! と言えるからだと思います。
この10年の間に何度かSEOはもう終わりだよね、と言われたり、SEO=怪しい仕事みたいなイメージもついたりもしましたが、これまで一度もやめようと思ったことはありません。

世の中には貴重なコンテンツを持っていたり、素晴らしい商品を販売したりしているサイトがたくさんあります。そういうサイトとユーザーの出会いを提供できるのがSEOです。
大金をかけなくても、広告を出さなくても、サイトの力を引き出すことで誰にでも集客の機会がある、という点がすごく好きなんです。

これからもSEOきわめていく志とは

――現在のSEOは、以前と比べて何か変わりましたか?

江沢:個人的にはGoogleがすごく苦しそうに見えます。
巧妙なスパマーが増えて、それを必死で防止しようとしているからか、なんかどんどんアルゴリズムが複雑化しているような……。昔はGoogleダンスが月に1回あって面白いように順位が動いたものですが。アルゴリズムも100くらいでわかりやすいものでした。

あとは技術的な要因が増えたなと感じています。
URL1つとってもリライト、正規化、リダイレクト、クロール制御、sitemapsなど考慮しないといけない要件がいろいろあります。エンジニアさんがプロジェクトに入ってないと厳しいですね。

――この業界、プロフェッショナルの女性はめずらしいのでは。
男性との感覚の違いとか、強みに感じるところがあれば教えてください。

江沢:まず女性向けサイトができることです!
化粧品、アパレル、料理など、男性だとなかなかキーワードが選べませんよね。

あと、SEOは複数の作業をやらなくてはいけないのでマルチタスクになります。
あるサイトの設計をして、こっちのサイトのカテゴリを作って、こっちのサイトのログを見て、など作業が多岐にわたるんですね。あれこれこなすというのも、どちらかといえば女性向きではないでしょうか。

――SEOをやっていてよかったと思うのはどんなときでしょうか?

江沢:もちろん効果が出てお客様が喜んでくれたときです。
あとはお客様がSEOに興味を持ってくださるのがすごくうれしいです。SEOチームができました、社内で勉強会しました、こんな調整をやってみましたよ、というような報告はとてもうれしいです。

――逆にもう絶対やめてやる、と思うことがあれば。

江沢:SEOをやめてやる、と思うことはないですが、お客様都合で要件が満たないときに効果が出ないと言われるのが一番つらいです。
今はあまりないですが、昔はデザイン会社、開発会社とそれはもめることが多くて……MTGで顔もあげてもらえないとか(苦笑)。

いろいろな制約で入れられない要件って結構あるんですよね。
昔、安川がシステムの制約でSEOをほとんどできないお客さまに対して「やらないことのリスク」というプレゼンをしたのが印象に残っています。

――SEOをやってきてすごく困ったこと、役立ったことはありますか?

江沢:困ったのはOvertureのキーワードアドバイスツールが終了したときと、正体不明のYSTが突然出てきたとき。
Overtureのアドバイスツールはすべてのキーワード選定を頼っていたので、とても困りました。後にキーワードハンター(注:現在はキーワードウォッチャー)ができて、本当によかったと思いました。

役立ったことは、渡辺さんのSEMリサーチをはじめ、たくさんのSEOブログが登場したこと。そしてGoogleアナリティクスという無料版のアクセス解析ツールが出てきたこと。
これによってSEO効果をログから測るというのがかなり浸透したと思っています。

手書きのサイト構造図メモ書き
江沢の手書きのサイト構造図メモ書き。案件で資料に落とし込む前に、まずは手書きで試行錯誤します。

――いろいろあるけど私はSEOだな、と話していた言葉が印象に残っています。これからもSEOをきわめていきたい理由と、志を。

江沢:これからもきわめていきたい理由はいつになっても飽きることがないからでしょうか。
私は推理小説が大好きなのですが、SEOは謎解きに似ています。急にGoogleでヒットしなくなった、突然流入が減った、なんで効果が出ない……そんなときにいろいろな角度から調べます。クローラビリティ、HTML、リンク、webマスターツール、アクセスログ……。

そしてお客さまのビジネスを知らないとSEOはできないこと。
不動産、旅行、アパレル、化粧品、グルメ、金融、健康、メディア、いろいろな業種をやってきましたが、何を扱っていてどんなユーザーがターゲットなのか、何がゴールかを知らないと施策できないので、毎回たくさんの発見があります。

SEOは本当に奥深い、だからいつまで経ってもきわめることはできないし、続けていきたいと思うのかもしれません。

あとは可能なかぎり現場にいたいです。
年々体力的につらくなっていますが、やはり自分で体感しないと机上の空論になってしまいそうで……。

――確か、仕事をする上で欠かせないものは……。

江沢:(即答して)漢方、お灸、HSTIです。
何のために仕事しているのか、というぐらい健康対策にはハマっていますね(笑)。

――これから本気でSEOをやりたい、という方に先輩としてメッセージがあればお願いします。

江沢:SEOは人が育ちません(苦笑)。
渡辺さんとも会うたびに話している気がしますが、本当に難しいです。ログも見られないといけない、HTMLもわからないといけない、システムの知識もあるとベター、覚えないといけないことが多岐に渡ります。

もしSEOコンサルタントに興味のある方がいれば、幅広くいろいろなことを勉強するのがいいかもしれません。
そしてSEOの手法よりも検索エンジンの仕組みを理解すると応用が効くと思います。

――江沢さん、ありがとうございました。

インタビュイーとインタビュアー

江沢真紀の写真

話し手

アユダンテ株式会社
SEOコンサルタント
江沢真紀

寳洋平の写真

聞き手

アユダンテ株式会社
SEMコンサルタント
寳洋平

以上、弊社SEOコンサルタント江沢真紀のインタビューでした。
いかがでしたでしょうか? 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。感想・コメントがあればTwitterFacebookなどへぜひお寄せください。

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