CRO (CVR最適化)にまつわる常識はみんな間違っている
2014年05月29日
ライター:Larry Kim

はじめに訳者より

タイトルにあるCRO(CVR最適化)という言葉はあまり定着はしていないようですが、コンバージョン率(CVR)を高めるための施策を包括的にとらえたものです。ランディングページ(LP)のクリエイティブの調整、コンテンツの充実、サイトの表示速度の改善など、CVRを改善するための施策は多岐にわたりますが、Larryは何千ものアカウントのデータを分析した結果、高いCVRを継続的に記録しているアカウントのLPには共通点があるといいます。そこで今回はLPの最適化に的を絞った話になっています。
また文中に「ユニコーン」という言葉も登場しますが、これについては前回のLarry Kim翻訳記事「ユニコーンを探せ:クリック率を平均の3倍にする秘訣」をぜひお読みください。こちらの記事ではクリック率を高めるための施策について語っているので、本稿と合わせて読んでいただけるとさらに理解が深まることと思います。

※この記事はWordStreamのLarry Kim氏の許諾を得て、以下の記事を翻訳したものです。
Everything You Know About Conversion Rate Optimization Is Wrong
Larry Kimツイッターアカウント:@larrykim

コンバージョンはあなたの有料検索広告の戦略において重視されている要素だ。それなのに結局、見物しているだけのユーザーを購入者に変えることがほとんどできていないとしたら、いったい何のために広告を打っているのだろう?CROを行って、見込み顧客の多くを納得させ行動に移させるスイートスポットを探し出せば、検索広告に費やすほんの1円でさえ最大限に活用することができる。

それにしても、よいCVRとはどんなものなのだろう?もしすでに3%、5%、さらに10%ものCVRを達成しているとして、さらに目指すべき数字というのはどれくらい高いものなのだろう?

われわれは最近、運用金額の合計にして30億ドルにも相当する何千ものAdWordsアカウントを分析し、その中に平均の2~3倍のCVRを達成している広告主がいることを発見した。あなたは平凡でいたいか?それとも同業他社と比べて飛躍的なパフォーマンスを叩き出したいか?

LPとCVRを軸にこの膨大なデータを分析した結果、CVRのトップランナーに位置するLPにある共通の特徴を見ることができた。彼らはあなたが持っていないどんなものを持っているのだろう?信じるかどうかはあなた次第だが、あなたがCVRを現状の2倍や3倍にすることはそれほど難しいことではない。しかし、そのための方策は、一般に言われている典型的なCROの方法と真っ向からぶつかるものなのだ。

[もしわたしがバナーボタンの色をごちゃごちゃいじくるのをやめろと言ったらどうする]
(※訳者注:一般的にバナー広告等に使われるボタンの色は緑がもっともクリックされやすいと言われており、ボタンの色を複数テストするというのはよく行われている施策です)

この記事では、CVRを飛躍的に高めることができ、自分のキャンペーンにも応用可能な方法を、ステップバイステップで学ぶことができる。すべての方法はマーケットでもっともよい(そして最も悪い)パフォーマンスを出している広告主たちの分析データに裏付けられている。今日見ていくのは以下の項目だ。

  • 一般に広まっているCROの法則がバカげている理由
  • よいCVRとは何か?
  • 高いCVRを誇るLPの成功をどうやって他のキャンペーンに応用するか

あなたがCROについて知っていると思っているすべてのことがなぜ間違っているのかを明らかにする準備はできたかな?ではいこう。

一般に広まっているCROの法則がバカげている理由

あなたが今までずっと耳を傾けてきた専門家たちの言うことを間違っていると理解するのは、着ぐるみのマスコットが生きているわけではないということを子供が初めて理解するのと少し似ている。ふわふわした着ぐるみの下は汗をかいた無精ひげの男が入っているだけだ。CROについてこれまで学んできたすべてのことはそんなものだ。つまり、表面上はキラキラして素敵に見えるが、中身は全くない。

いったいなぜみんなそんなに誤解してしまうのだろう?そもそも、みんなと一緒に同じ歌を歌っている限り、あなたは平均から抜け出すことはできない。権威ある専門家たちがみな同じ最適化を説き、競争相手がみなそれに耳を傾けたら、あなたはどうやって一歩抜きん出るつもりなのか?

もっともよく知られているCROはバカげている

紳士淑女の皆様。さあさあ偉大なるCROのおとぎ話が始まります。昔むかしあるところに、自称マーケティングの神様がおりました。神様はみなにサイトを最適化することが何よりも大切だと言い、例を一つ上げました。ボタンの色、行間、画像を変えたところ、驚くなかれ。その広告主のCVRは2~7%も跳ね上がったのです。

最高じゃないか?…いや、それが、そうでもないのだ。これらは非常にありふれたABテストの成功事例だ。そう、こうした調整は日々継続的にやるべきで、そうすればおそらくわずかな、1ケタ台のCVRの上昇を見ることができるだろう。しかしそれでは、10%を超えるCVRを射止めることはできそうにない。

そうしたちょこちょことした微調整によって得られたわずかなゲインが何をもたらすかを教えよう。例として挙げるのはLPのABテストだ。下のグレーの線がオリジナルのLP、青い線がテストするLPである。最初はテストするLPがオリジナルをはるかに上回るパフォーマンスを示した。これは素晴らしいんじゃないか?

しかし見て明らかなように、その効果は長くは続かない。よかったはずのLPは次第に停滞してしまっている。われわれは20から30のテストを同時に行ったが、すべてにおいて同様の結果を得た。これを「テスト初期ジレンマ」と名付けよう。初期にはリードするがその上昇曲線は次第に下降し、最終的には差がなくなってしまう。

もちろん常にそうであるということではない。しかし、大多数のケースを見てわかったことは、行間やフォント色を変えるといった小さな調整は小さなゲインしか生まないということだ。大幅かつ本格的で継続的なコンバージョンを獲得したければ、数日あるいは数週間しか続かないような小さなゲインはスルーすることだ。

どうしてそうなるのか?だいたいにおいて、あなたが見ているCV総数は基準として少なすぎるのだ。調整する中で見ているCV数が50、100あるいは200程度だとすると、ほんの小さな変化でもインパクトが大きく見えてしまう。CV数が50しかない場合、調整により4%もCVが増えるかもしれないが、それではサンプルサイズが十分ではない。

沈みゆくタイタニック号の上でデッキチェアをあちこち動かすのはもうやめよう

ことLPの最適化となると、ほとんどインパクトがない些末なことにかまけてしまいがちだ。それは沈むタイタニック号を立て直そうとしてデッキチェアの位置を調整するようなものだ。もうこうした考えはやめて、抜本的な最適化の施策に切り替えよう。そうすればパフォーマンスは劇的に変わるだろう。もしかしたら、あなたの運命さえも変えるかもしれない。

まずは、次のことを知る必要がある。

よいCVRとはなにか?

ヒント:あなたが考えているよりはるかに高い

一般的によいCVRとは2-5%程度とされている。もしあなたのCVRが2%にとどまっているとしたら、それを4%にするということはとんでもない飛躍のように思えるだろう。CVRを2倍にするなんて!それはすごい、おめでとう!でもそれではまだあなたは平凡なパフォーマンスの団子レースの中にいる。

この記事では、われわれが見ることのできるすべてのアカウントの過去3か月のデータを扱う。ただしコンバージョントラッキングが正しく設置されていないアカウント、1か月でCV数が10に満たないまたはクリック数が100に満たないアカウントは除外した。そのうえでCVRを軸に分析対象のアカウントがどのように分布しているかをグラフ化した。

さて、よいCVRとはなにか?全アカウントのおよそ1/4はCVRが1%に満たず、中央値は2.35%、しかし上位25%のアカウントのCVRはその2倍、実に5.31%にもなっていた。いちばん右端の赤いバーを見てほしい。上位10%のAdWords広告主のCVRは11.45%である。

覚えておいてほしい。アカウント全体のCVR11.45%を達成するために重要なのは、ひとつひとつのLPなどではないということを。

はっきりしているのは、この高いCVRは例外などではなく、まったくもって達成可能なものだということだ。現時点で5%のCVRを獲得しているのなら、すでに他の広告主の75%より上にいるということになるが、まだまだ上昇の余地はある。

あなたはCVR10%、20%、いやそれ以上を狙い、今のCVRを3倍、5倍、いやそれ以上に高めなければならない。LPのCVRユニコーン(前回の翻訳記事「ユニコーンを探せ:クリック率を平均の3倍にする秘訣」を参照)を是が非でも見つけよう。

でも自分の業界はCVRが低いんだけど…

それでもまったく可能だ。われわれはCVRに関するデータを業種ごとに分類し、すべての業界で同じことが言えるかどうかを検証してみた。次のグラフは、主要4業種の分析結果だ。

イーコマースは平均的なCVRをはるかに下回り、特に金融と比べるとその差が顕著だ。しかし、上位10%のCVRを見てほしい。上位10%は全業種の平均の3~5倍も高いCVRを誇っている。したがって、どの業種においてもCVRを3~5倍引き上げることは可能だとわかる。

逆に、当然ながら、もし自分の業界が金融などパフォーマンスの高い業種だとしたら、5%というCVRは決して優れたものではない。自分のCVRをそれぞれの業種の平均と比較して、よくやっていると思い込んでしまうかもしれないが、実際トップ10%は平均の5倍ものCVRを達成しているのだ。

業界としてCVRが低い場合でも、その中のトップ広告主は平均を3~5倍も上回っているのだ。

上位10%のCVRを生み出すLP: 何がそうさせているのか?

上位10%のCVRを生み出すLPユニコーンはどんなもので、そしてどのようにして競争相手を圧倒しているのだろう?われわれは1,000のLPを調べて定性分析を行い、マーケットで最もよいパフォーマンスを生み出すLPに共通する特徴を見つけ出すことにした。

これがLPをユニコーンのステータスに到達させるための5つのコツだ

1.オファー(ユーザーの行動を促す条件提示)を変更する

高いパフォーマンスを維持しているLPは、非常によく考えられた、差別化されたオファーを提示している。だいたいの会社はごくあたりまえの、ほかの競争相手もみなやっているようなオファーしか提示していない。たとえば弁護士なら無料相談といったような。ソフトウェア会社なら無料トライアルといったような。そんなものはまったく想像力に欠けるし、よく練られてもいない。

あなたのオファーがお粗末なものかどうかをどうしたら知ることができるだろう?もしCVRが2%以下で行き詰っているとしても、オファーがお粗末とまでは言えない。それがいちばんよくわかる方法とは顧客に聞いてみることだ。われわれはランディングページの入力フォームに質問を1つ追加し、ユーザーが何を求めているかを聞いてみたが、それはソフトウェアの無料トライアルではなかった。

ブレインストーミングでアイデアを出し尽くし、顧客に聞き、そしてより特色のあるオファーを考え出してそれをテストしよう。新しいオファーをテストしてみない限り、どんなオファーがより多くのCVを獲得できるかはわからないのだ。

2. フローを変えてみる

ときには、気づかないうちにCVを妨げる障害物を自分で作ってしまっていることもある。

上の例はまず最初のランディングページなのだが、無料トライアルのソフトウェアをダウンロードするためにどれだけ多くのの情報を入力しなけれなければならないかがわかる。これは明らかに項目が多すぎだ。こんな見込み顧客の気力を失わせるようなユーザーエクスペリエンスはだれも望んでいない。

次の例は何度も試した末に飛躍的にパフォーマンスを高めることがわかった修正版のLPだ。このLPではフローを変更して誰もが簡単にファイルをダウンロードしインストールできるようにした。最終的にはソフトウェアを登録することが求められるのだが、この時点でユーザーはすでに10~15分ソフトウェアを体験しているので、登録フォームに入力するための時間を割いてくれる可能性は最初のLPと比べればはるかに高い。

このLPは非常に効果的で、CVの増加にうれしい悲鳴を上げるほどになった。最終的にこの会社はこのフローも変更して、より確度の高いリードを獲得するために登録フォームを使用することとした。見込み顧客が時間をかけてソフトウェアを知ることができるよう、ダウンロードの1週間後に登録を促すようにしたのだ。この変更によりCVは増加し、のみならずはるかに効率的にリードの質を上げることにも成功した。

もうひとつ素晴らしい例を挙げよう。この広告主は、LPのオファーが検索をしている人と必ずしも直接の関係があるとは限らないということに気付いた。この場合だと、LPに直接関係がある人の家族や友人が助けを求めているかもしれないということだ。

この広告主は、訪問者に自らのフローを選ばせることにした。これはCVの面でも、リマーケティングのためのセグメンテーションとしても、そしてリードの質を上げる労力の削減という面でも絶大な効果を発揮した。

さあ、ここでのお持ち帰りポイントはなんだろう?あなた自身の見込み顧客にもっともふさわしいフローをみつけてそれを使い、CVRを引き上げるのと同時にリードの質を上げよう。

3. リマーケティングをCROのツールとして使う

平均で96%の人が、ウェブサイトを訪れてもリードや売上につながることなく離脱している。リマーケティングではそうして離脱してしまった人たちがウェブ上でメールやYouTubeの動画やSNSを見ているとき、または何か情報を探しているときに、絞り込まれた関連のあるメッセージで引きつけることができる。

以下の記事でこの極めて効果的な戦略について詳しく解説しているので見てほしい。
(リマーケティング:コンテンツマーケティングとSEOを7倍うまくやる方法)

4. 1つのユニコーンを見つけるためにLPを10回テストする

ここで地道な努力の話をしよう。ユニコーンLPを見つけるために、CROの施策として何をするべきだろうか?これを理解するために、CVRのトップランナーに位置するLPがどれくらい存在するかを見てみよう。

中にはラッキークリックで高いCVRを出しているLPもあるかもしれないが、アカウント全体のCVRで上位10%に入りたいと思うなら、ここまで解説してきた方法を何度も繰り返して、継続的にテストを行う必要がある。

広告主は平均で4回、LPのオファー、フロー、メッセージなどを変えてテストをし、イケてるLPを見つけようとしている。もし、CVR上位10%に入り、平均の3~5倍のCVRを達成するようなLPユニコーンを見つけたいなら、最低でもLPを10回テストする必要がある。

われわれが1,000の固有なLPを持つあるイーコマースのアカウントを分析した結果はこうだ。全トラフィックの約1/3はもっとも流入が多いLPに流れており、さらに見てみると、トラフィックの80%は全LPのうちのたった10%に集中していたのだ。

なにも何千ものLPを作る必要はない。すでにあるLPの中からもっともパフォーマンスのよいものを見つけ、それに努力を集中しなければならない。どうやってパフォーマンスを改善するか?それには無駄をそぎ落とし、パフォーマンスの悪いLPのために時間を浪費することをやめよう。つまり、パフォーマンスの悪いLPを削除するのだ。たったひとつ優れたLPがあれば、それにすべての労力をつぎ込んだ方が賢い。

ここで、夜なべしてやたらにたくさんのLPを作成することが、最適な時間の使い方ではないというさらなる証拠を示そう。

何万ものアカウントをCVRと固有のLP数を両軸にとってグラフ化したところ、LP数の増加とCVRの上昇には強い相関関係は見られなかった。

トップランナーを追いかけているのなら、量は必ずしも質を意味しない。

5. CVRなんてどうでもいい

ちょっと待って、なんだって?

[CVRがどうでもいいなんてそんな簡単なものじゃないぞ]

もう少しお付き合いいただきたい。高いCVRは表面的にはとても魅力的に映るだろう。しかし、それで質の低いリードしか獲得できないとしたら、かえってそのリードを獲得するのにかかったコスト以上の金を捨てることになる。そういうリードには金がかかるのだ。

ここまで述べてきたように、高いCVRだけではなくより質のよいリードを獲得できるよう、質という観点にこだわったLP最適化を図ってほしい。

重要なお持ち帰りポイント

では、ここでのお持ち帰りポイントは何か?以下のまとめを肝に銘じ、より総合的で効果的なCROの戦略を導き出してほしい。そうすればCVRを高め、同時により質の高いリードを獲得することができるだろう。

  1. ほとんどのLP最適化施策は沈む船を立て直そうとしてデッキチェアの位置を変えてみるようなものだ。小さな変更は小さなゲインしか生まない
  2. LP最適化にしつこいほど重点的に、戦略的に取り組めば、CVRを3~5倍にすることができる
  3. 業種によっては、CVR5%でも大したインパクトがない場合もある。CVRが2~5%で足踏みをしているなら、改善の余地はいくらでもある
  4. LPのオファーを様々な角度から考え、何度もテストして、見込み顧客に響くものを見つけよう。飛び上がって大喜びしたいのなら、より質の高いリードに結びつくようなオファーを考えよう
  5. 見込み顧客がCVすることを妨げている障害を見つけ、それを取り除くためにフローを変更しよう。いくつもバリエーションをテストし、見込み顧客に最適なCV経路を見つけよう
  6. リマーケティングを使って関心を示しながらCVしなかったユーザーをもう一度捕まえよう
  7. 数ではなく質でテストをしよう。1つのトップランナーLPを見つけるためには10のバリエーションをテストすることが必要だ。ただしそのテストはフォント色の変更などいう小さなものではだめだ。それはバリエーションとは言わない
  8. アカウントの無駄をそぎ落とし、パフォーマンスの低いLPは削除しよう。トラフィックの80%を占める上位10%のLPに全精力を傾けよう
  9. 常に、常にそのトップランナーに目を光らせておこう。それはより多くの売上を達成し、または売上につながるリードを生み出すものだ。リードの質よりCVRの高さを優先してはならない。そうしないとリードの質を高めるためにより多くの時間と労力を割かなければならないことになる。すべてが円滑に回り出すスイートスポットを見つけなければならない。

さあ自信をもって出発しよう、若きマーケッターのみなさん。新しく手に入れたCROのための知見で競争相手を打ち負かし、見込み顧客をあっと言わせよう。

訳者まとめ

いかがでしたか。CVRを上げるためにはフォントサイズや色の変更など小さな調整は小さなゲインしかもたらさない、ユーザーを惹きつけリードの質も同時に上げることができるようなオファーを考え出せ、トラフィックの80%を占める上位10%のLPに集中して他は削除せよ、など相変わらず思い切った提案です。流行りのインターネット・ミームなども交えつつ、コミカルでズバズバと大胆な語り口につい気を取られてしまうかもしれませんが、アカウント運用担当者であれば実感として理解できる事柄も多いのではないでしょうか。広告・サイト運用の目的やCVの種類によってそのまま取り入れることが難しい場合もありますが、最後のまとめの9ポイントをぜひ参考にしてみてください。
今後も定期的にLarryの記事をご紹介していきたいと思います。

(訳/三浦麻実)